教員免許に国家試験の導入提言 教員の質的向上につながるのか?・ゆとり教育から脱却?新学習指導要領の謎、いじめ自殺問題、教育基本法改正、教員の不祥事など教育問題が注目され、教育改革が急がれる今の日本の教育ニュースを総チェック!将来の日本を背負う人間をそだてるために学校、保護者、地域、企業ができることは何か?





〈最新教育ニュース〉スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

〈最新教育ニュース〉教員免許に国家試験の導入提言 教員の質的向上につながるのか?


 自民党の教育再生実行本部が、教員免許取得に国家試験の導入を盛り込んだ提言を公表した。現行制度では、大学の教員養成課程の修了者に対し、大学のある都道府県の教育委員会が免許を発行しているが、提言では学生に国家試験を課し、さらに一定期間の現場研修を受けさせたあとで付与する仕組みを想定している。国家試験は教員の質的向上につながるのか否か。十文字学園女子大学の横須賀薫学長と実践女子大の宇佐見忠雄教授に聞いた。(花房壮、玉嵜栄次)
本気で勉強させるための関門 十文字学園女子大学長・横須賀薫氏 

 --教員免許取得をめぐる課題は

 「10年以上にわたり、70~80の大学に足を運び、教職課程をつぶさにみてきたが、学生が勉強をしなくても免許が取れてしまう現状がある。学生がさぼっているのではなく、大学側が楽に手に入るようなものにしてしまっていると考えざるを得ない」

 --国家試験が必要な理由は

 「医師や弁護士だけでなく、管理栄養士や介護福祉士の資格を取得するためにも国家試験はある。学生たちは試験合格を目指して一生懸命勉強するし、教員も他の大学に負けないよう力を入れて教えている。教員志望の学生に本気で勉強させるためにも国家試験という関門を課すべきだ」

 --学生たちは都道府県教委などが行う採用試験対策はしている

 「採用の1次試験は基礎知識で、2次は実技、面接、論文。そこで採用を決めるが、難易度は各都道府県でばらばら。だが、国家試験を実施すれば、統一的な試験となり、学生たちは全国で同じように勉強するようになる」

 --採用のあるべき姿は

 「採用試験は現行のように各都道府県などの単位でやるほうがいい。それぞれの事情があるからだ。国家試験を導入すれば、各都道府県教委などは面接に専念でき、学生のやる気や人物をじっくりみることができるようになる」

 --逆に、国家試験を導入することで、優秀な学生が集まらなくなると懸念する声もあるが

 「優秀の定義もあるが、そんなに優秀な人材が集まっているのか、と問いたい。そもそも、教職の世界は地道にやる人材が入ってくるところであり、第一級の知識人が入るような世界ではない。問題は教員免許が安易にとれる制度になっていること。教職を目指す学生はもともと一定の層をなしており、この学生たちが勉強するように仕向けたい」

 --多様な人材が少なくなり、教員の人間像が狭められるとの意見もある

 「国家試験で知識の有無を問うことと、人間像は別の話。逆に、国家試験を伴う弁護士や医師などの世界は、人間像がパターン化しているのかと聞きたい。ためにする反対論だ」

--国家試験が導入されると、政府見解と違う回答をすると落ちるのでは、と懸念する声も

 「試験は公にやるものだから、問題は常に批判にさらされ、見直し対象にもなる。政府見解を一方的に聞いているのではないか、との批判も出るだろう。だが、国が直接、試験問題をつくるわけではない。センター試験は独立行政法人の大学入試センターが問題を作成しており、教員免許の国家試験も大学関係者と学校現場の関係者が協力して作題する体制が望ましい」

 〈よこすか・かおる〉昭和12年、横浜市生まれ。78歳。東大卒。宮城教育大教授、平成12年から18年まで宮城教育大学長、19年から十文字学園女子大特任教授・学事顧問、23年から同大学長を務めている。

筆記試験より「人間力」を測ることが重要 実践女子大教授・宇佐見忠雄氏

 --国家試験として、全国共通の筆記試験が想定されているようだ

 「国が作問することになるペーパー試験の点数のみに重点を置いた選抜にならないか心配だ。教員の適性はペーパー試験の点数ですべてを測れるものではない。特にこれからは教員の『人間力』が試されているのに、時代に逆行しないだろうか。筆記試験よりも、むしろ個々の受験者の人間性や指導技術をチェックすることが重要になってくると思う」

 --教員養成を担う大学側も変化を余儀なくされそうだ

 「国家試験導入の背景には、大学をふるいにかける狙いがあるのだろう。合格者数や合格率、採用率などが大学の成績として外部からも見えるようになる。確かに、教員免許を出すことを学生獲得の材料にしている大学もあるので、免許の乱発を防止したいという考えも理解できないではない」

 --負の側面は

 「大学の養成課程では、採用試験の受験対策講座が増えていくだろう。受験テクニックにたけた学生が採用されやすい制度になる可能性がある。一方で、受験勉強の要領は良くないが、受験科目に限らずさまざまな学問分野に関心を持って勉強した上で、教職を目指す“余裕派”の学生もいる。そうした学生に不利な選抜方法になってしまわないか心配だ」

 --教員に求められる能力とは

 「学級崩壊を防いだり、保護者と十分にコミュニケーションを取ったり、学校現場で生じる多様な課題に臨機応変に対応できる力だ。総合的な実力が求められている。受験一辺倒の選抜方法によって、そうした能力を見いだせるかどうか疑問だ。実力が伴わずに現場に入ってしまうと、息切れして仕事を続けていくのは難しくなるだろう」

 --免許取得までに1~2年程度の研修期間も想定されているようだ

 「家族を抱えた社会人の教職希望者にとって大きな負担になりかねない。新卒受験者と社会人受験者の公平性が保てるかどうかを慎重に検証しなければならない。学校現場に人材の多様性がこれまで以上に求められている中で、社会人からの転職者が二の足を踏むことになれば、人材難につながるだろう」

 --国家試験の導入は、教育の質の向上につながるか

 「新しい採用試験を導入するだけで、教育の質を向上させる条件である優秀な人材を集められるとは思えない。多くの教員が感じている多忙感の解消や、スキルアップにつながらない形式的な研修制度の廃止など、教員の待遇改善こそがモチベーション向上につながり、人材獲得の最善策となるのではないか。上からの改革だけでは問題は解決しない」

 〈うさみ・ただお〉昭和20年、愛知県生まれ。69歳。東大大学院教育学研究科修了。名古屋文化短大教授を経て、平成13年から現職。専攻は教育学。著書に「現代アメリカのコミュニティ・カレッジ」など。
関連記事
スポンサーサイト

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。